Title: コクリコ。

先日コクリコ坂をみたのだけど。

すごくいい映画だった。

おもしろい!とか。考えさせられた!とか。

そういうのは一切なくて、見終わったときに、しみじみと、いい映画だったなと思えたのだ。

一番感じたのは、不完全なものや未成熟なものが、未完成だからこそ持ちうるメリット、未完成だからこそある美学みたいなものがうまく描かれていたと思う。

戦後の混乱、動き出したばかりの社会や教育、そして思春期の人間関係。そのどこにもグレーな部分が蔓延していて、そのグレーな部分をみんなが享受しながら、そこにしかないメリットを堪能している感じがすごく生き生きしていたし、古き良きなんてノスタルジックな言葉は使いたくないけど、あの映画の中に描かれる日本をみていると、行き詰まった現代が、なんで行き詰まっているのか、その訳がわかるような気がした。

あの時代にあって、現代に欠けてしまっているものの1つに、「無粋」を感じる心というものがあるのだと思う。それは無粋だぜ。いう共通感覚みたいなものがあの時代に生きている人たちにはあったのだろうと思う。

グレーなものをグレーのまま丸ごと受け入れる心。

現代は、権利や資本や合理性を掲げて、味とかわびさびというような、感覚的な配慮や思いやり、なにかを慮る心というものの、価値や存在自体がナンセンスだという波に押しやられてしまっているのだ。

印象に残ったのは、生徒会長が2人の間に流れる不思議な空気を感じ取っても、そこにはあえて触れないで、無言でやり過ごすシーン。その描写にぐっときた。

あの映画を見ていて、自分は無粋な人にはなるまいと思いながら、映画館を後にしたのだ。

POSTED @ 2011.09.16 | Comment (0) | Trackback (0)

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