Title: ばく。

ぶかぶかでも、きつくもない服。

背伸びもせず、遜りもしない声。

大きくも小さくもない言葉。

優しくも厳しくもない眼。

そっちでもこっちでもない速さ。

苦しい時に笑うわけでもなく。
うれしい時に泣くわけでもなく。

晴れの日に雨宿りをして、
雨の日に走り出すわけでもない。

それでもきっとこれからも春の風に吹かれて鼻歌を歌い。

冬の寒さに歯を打ち鳴らしたりもするし、

音や、匂いや、夜風や、真っ暗な湯船に心地よく酔い、

ひだまりや、胸の奥底からわいてくるじんわりとしたぬくもりや、

夏の夕立に絶望的な気持ちになったりもするのだと思う。

でもその一つ一つの感覚に決して意味を見つけず、

理由を探さず、

捕まえようとせず、

気化するその瞬間まで目をそらさずにいようなんて思わずに、

思い出したかのように、

ポケットの中の飴玉を口の中にほりこんで、

くしゃみのひとつでもして、

鼻をすすってすすもう。






POSTED @ 2018.01.05 | Comment (0) | Trackback (0)

コメントを書く。