先日、ラーメン二郎を食べました。知る人ぞ知る神保町店に10時半から並びました。
二郎神保町店は、生粋のジロリアンの中でも一目おかれる名店だそうです。そんな玄人店にこんなど初心者が行くというのはとても勇気のいることです。
しかも注文の仕方が特殊で、マシマシなんとかだとか、残すと怒られるとか、初心者がいくと玄人に舌打ちされるとか、こわい噂ばかりを聞いていたので、戦々恐々だったのですが、歴戦のジロリアンの友人(平原)と、中級ジロリアンの友人(川村)が一緒だったので、泥舟にのったくらいの心持ちでいざ向かったわけです。
並んでいると、先頭から注文を聞きにきます、マシマシはここでは言ってはいけないそうです。ここではあくまで麺の量を聞きに来るのだそうです。迷わず小です。ちなみに小で普通の麺の2,5倍だそうです。
ちなみに中級ジロリアンの友人がとちくるって、中といったら、店の人に失笑されたあげく、刺さるような声で、大か小しかありませんと言われてました。あの時の店員の顔と言ったらプーチン大統領のようでした。
そしていよいよ入店です。
食券を買うまえに、その横の自動販売機で、黒烏龍茶を買います。これもなにか暗黙の儀式かのように厳かに、かつ速やかに執り行います。1000円札で買うと後ろの人に気を遣うので、小銭を用意しておくといいようです。
そして次に食券です。歴戦ジロリアンに続き、小豚と書かれたプレートを購入します。「こぶた」ではありません「しょうぶた」です。
そして席に着くと、カウンターの向こうで、ザ・ラーメン職人、というような親方風の人が麺をゆでています。その間はずっと目を伏せて待ちます。
しばらくするとおもむろに、次の小豚の方は?どうしますか?と聞かれます。
ここで、あれです。いよいよ例のマシマシです。
でもマシマシは食べきれないので、今回はびびって、事前に予習しておいた、ニンニク、油!を待ってましたと言わんばかりに、若干くいぎみで伝えます。少し声がうわずりましたがちゃんと伝えられました。すると一瞥をくれたあとに、厳かにラーメンが目の前におかれます。
ここからが戦です。脳内にゴングが鳴り響きます。いやホラ貝が鳴り響きます。
正直衝撃です、一目で食べきれないのがわかります。噛んだらダメだ、流し込むんだと譫言のようにつぶやきながら、まずもやしを飲み込みます。そして麺。
隣をみると歴戦ジロリアンはすごい勢いで麺をかき込んでいます。
それをみていて、このまま店内に取り残されたらやばい、孤独と不安に押しつぶされてしまうと思って一生懸命食べました。たべきれなそうなチャーシューは左の中級ジロリアンのどんぶりに横流しします。
ぶっちゃけ。うまいです。
すごいうまかったです。個人的にツボでした。
貪るようにどんぶりに顔をつっこめます。
しかし中盤からは自分との戦いです。満腹を超えたところで、残したら怒られる・・・という情報が頭をちらちらかすめるのです。しかし胃袋は限界です。ちらりと歴戦のジロウをみると、無言で箸をふります。長いつきあいなので、瞬時にそれが、「貸せ、あとはおれにまかせろ」だということがわかりました。
こんなに彼を頼もしいと思ったことはありません、迷わず残りの麺を彼のどんぶりにいれます。しかし彼は、全部食べてくれるわけではなく、ふたすくいくらいしたところで、「あとは自分でけりをつけろ」と無言で伝えてきます。
しかたなく、また残りの麺と格闘です。
人間満腹が限度を超えると、震えがくるということを初めてしりました。小刻みに右手が震えます。それをみたジロウは、残すんなら、麺が見つからないようにスープに隠せ、せめてそこまでは食え。と小声で教えてくれました。
希望の光でした。せっせとスープの中に麺を隠します。
心のなかでごめんなさい、ごめんなさいと唱えながら。
それでも怒られるのではないかとおもいビクビクしながらどんぶりを返し、ごちさまをいうと同時に逃げるようにお店を後にしました。店を一歩でたときには、なにかへんな開放感と、高揚感、そして満腹感に、いままで味わったことのないような気持ちになりました。
立っているのもつらく、こんなに暴力的な食べ物を食べたあとなのに、なぜかあたたかい、愛の鉄拳をくらったような気分です。
昔、本間学級の時に、竹村と喧嘩をして、美術室に呼び出されて、なぜか自分はなにも悪くないのに、喧嘩両成敗だといって、本間先生に辞書でぶん殴られたのを思い出しました。
とても苦い想い出です。
そして今、この文章を書いていて、また二郎が食べたくなっています。
店から一歩出た瞬間、もう無理だ、もう食えない、これはきつい、思わずそんな感想しかでなかった自分が、2日経ってまたあの味に会いたいと思ってる。
人生はおもしろいものです。
Life Is Beautiful。